階級政党化した自民党と大衆政党化した民主党

安倍さんと自民党

自民“拒否率”激増 36%(しんぶん赤旗)

組織力で勝てない理由

きのうの参議院選挙では、党員数が5万人に満たない(サポーターは20万人くらい)の民主党が60議席、党員120万を擁する自由民主党に23議席もの差をつけて圧勝した。自民党員の比率が高いと思われる一人区でも、与党の6勝23敗と野党陣営が大勝だった。
組織力で圧倒するはずの自民党が、民主党に負けるのはどうしてだろう。それは、日本共産党を考えてみればわかる。共産党の党員は40万人を数えるが、都道府県別では民主党に全敗している。その理由は簡単で、共産党は階級政党とみられているため、支持を得ることができる層が一定以上には広がらないからだ。世論調査で、共産党に対する拒否率(投票したくない政党)が最近まで1位を続けてきたことからもそういえる。これでは、いくらがんばって運動しても、得票の伸びには限度がある。

『富裕層の共産党』になった自民党

しかし、冒頭にリンクした赤旗の記事によると、現在では自民党の拒否率がダントツに高い。共産党よりもはるかに高い。赤旗では理由を特に示していないが、これは自民党共産党と同じく階級政党になったためだと思う。共産党貧困層のための階級政党であるのに対して、自民党は富裕層のための階級政党になった。そのことを国民が実感してきた結果が拒否率として現れた。
かつての自民党は極右から左翼(さすがに極左はいない)まで幅広い人材を擁しており、時代の要請に応じて国民の各層の要求に応じることができる大衆政党だった。国民健康保険国民年金などの社会福祉政策ですら、自民党が実現させてきた。ところが、小泉政権あたりから、自民党は階級政党化をはじめた。端的な例が平成17年の郵政選挙で、郵政民営化法案に反対した自民党議員に公認を与えないばかりか、刺客と称して対立候補まで送り込んで「暗殺」を図った。自民党アメリカ流の自由主義者ばかりを多く抱えるようになり、この時点で自民党は『富裕層の共産党』になって、(共産党共産主義政党であるように)自由主義政党として階級政党化した。
自民党が富裕層のための政策しかやらないことがわかると、富裕層からしか支持を受けられなくなってしまう。それがわかっているから、小泉さんは靖国神社に参拝してみたり、安倍さんは教育基本法を通してみたりと、愛国心をアピールして、国民の目先をそらそうとする。しかし、株主や経営者の利益ばかりを追求して労働者を苦しめ、また、アメリカのイラク侵略に加担して国民に恥ずかしい思いをさせる自民党が、いちばん愛国心がないのではないか。

大衆政党となりつつある民主党

それに対して、民主党は今回の選挙で、国民の圧倒的多数を占める保守層に食い込んだ。保守層とは、共産主義自由主義も信じない、ほどほどの暮らしが維持できればよいと考え、権利義務関係よりも人とのつながりを信頼するような普通の人たちである。この人たちが政策に幅のある大衆政党を好むことは、ずっと自民党の支持基盤だったことからも明らかだ。そして、民主党は実際に右の人から左の人までを国会議員に擁して、大衆政党の実態を備えている。
今後はさらに多くの保守層が、階級政党となった自民党に背を向け、大衆政党の民主党に参加すると予想される。また、同じ層をターゲットにしている国民新党は、いずれ民主党に吸収されるかもしれない。
中間層や貧困層の票をとりまとめて、自民党を支えてきた創価学会の会員も、この敗北で『平和と福祉の公明党』が『富裕層の共産党』である自民党の応援を続ける矛盾に気が付きはじめるだろう。
こうして、数年後には民主党を与党として、自民党を最大野党とする1.5大政党制(かつての永久与党自民党と永久野党社会党のような関係)が固定化するかもしれない。また、政界再編を経て、右派の大衆政党と左派の大衆政党で政権を争う構図となる可能性もある。