ほんとうに壊れた自民党

野党的な人物を擁して永久政権を維持

自由民主党は、危機に陥ると、冷や飯食いの左派勢力に総理総裁の座を譲ることにより、国民の支持を回復してきた。いってみれば、野党的で首相が務まるような人物を、常に抱えていた。
自民党の主流派の中でも岸信介佐藤栄作福田赳夫のような復古的な考えを持つものから、池田勇人田中角栄大平正芳のような福祉国家を目指すものまで、思想的にはかなりの広がりがあった。そのさらに左派でも、石橋湛山三木武夫海部俊樹らが首相を努めた。
主流派にとってみれば党内の左派は煙たい存在だったに違いないが、党が批判を受けたときは擬似政権交代の役に立つし、平時でも暴走を食い止めてくれるので、永久政権を維持する強力な装置となった。また、左派の人たちも、自民党にいれば政策をいくらかは左右できるので、我慢して永久与党にとどまる価値があった。
さらに、自民党内に幅広い思想を容認することで、大衆政党として幅広い層からの票を集めることができた。

安倍さんがやめても代わりがいない?

先週の参議院選挙では、自民党は37議席しか獲得できず、宇野さんのときの36議席は超えているものの、総合的にみれば、安倍さんの責任の重大さは宇野さん以上のものがある。(参考「宇野越えを果たしたともいえる」)
宇野さんが参議院選挙で大敗したときには、海部政権が発足して支持を回復することができた。しかし、安倍さんがやめる様子もないのは、本人が意固地になっているだけではなく、代わりになる人がいないからだろう。
小選挙区制が導入されたことで派閥機能の弱体化した上に、小泉政権の刺客を送るやり方が、ほんとうに自民党を破壊してしまった。自民党の永久野党時代がはじまろうとしている。
反対に民主党は、自民党の中道派から社会党の右派までの幅広い人材を擁して、大衆政党の実体を備えている。今後も意見の多様性を守ることができれば、自民党に代わる大衆政党として、安定した政権を獲得する可能性が高い。