高段者と級位者の対局

currykid2007-07-29


選挙区は民主党、比例は国民新党に投票した。これから、友人とブランデーを空けて開票を楽しみます。
それにしても、小沢一郎さんの選挙のうまさには、感動すらおぼえる。地方の過疎地を回るのは、その映像が全国に流れることを計算に入れてのことだ。自民党が保守ではなくなったことに薄々気が付いている、地方の保守票が動く。地方の一人区は少ない票で議席につながるので、効率もよいだろう。都会の有権者にも、少なくとも悪い印象を与えることもない。
また、埼玉選挙区では定数3に対して、民主党が二人を立てている。うまく票を割れば二人とも当選しそうなのだけど、メディアの調査で票が一方に偏りそうだと出た。すると、民主党は劣勢の候補者のポスターをはがして、冒頭の写真のものに張り替えた。ポスターの地色はよく目立つ黄色で、地元の衆議院議員候補者の小さい写真が、「政権交代には2議席が必要です。二番手のこの候補に投票を」と書いてある。一番手の候補者にとって、気持ちのいいはずがないが、それをやらせてしまうところがすごい。
また、民主党の優勢が報道されると、群馬県知事選挙の敗北まで利用して、危機感をもたせるための檄文を全国に配布して最後の引き締めをはかった。
小沢さんは碁が強いらしいが、囲碁に例えれば、高段者と級位者が対局したようなものだ。基礎票のハンデはあったものの、安倍さんは友達の的はずれな助言に惑わされたりして、一気に追い付かれて、抜き去られてしまった。
…という結果になると思う。

投票率と当選ライン

各選挙区の投票率と当選ラインを予想してみる。
最下位当選者の得票数と、次点者の得票数の間だったら、当たり!

都道府県 投票率 当選ライン 都道府県 投票率 当選ライン 都道府県 投票率 当選ライン
北海道 65% 724,000 石川 62% 253,000 岡山 62% 447,000
青森 57% 281,000 福井 65% 192,000 広島 59% 305,000
岩手 63% 309,000 山梨 63% 205,000 山口 63% 356,000
宮城 56% 244,000 長野 66% 283,000 徳島 60% 170,000
秋田 68% 301,000 岐阜 62% 300,000 香川 61% 200,000
山形 66% 296,000 静岡 54% 355,000 愛媛 63% 315,000
福島 63% 249,000 愛知 59% 567,000 高知 60% 160,000
茨城 54% 261,000 三重 60% 433,000 福岡 57% 523,000
栃木 58% 307,000 滋賀 60% 285,000 佐賀 65% 197,000
群馬 55% 415,000 京都 60% 352,000 長崎 65% 362,000
埼玉 58% 568,000 大阪 55% 589,000 熊本 67% 384,000
千葉 58% 502,000 兵庫 57% 649,000 大分 70% 228,000
東京 59% 668,000 奈良 58% 304,000 宮崎 69% 222,000
神奈川 60% 694,000 和歌山 59% 223,000 鹿児島 69% 405,000
新潟 64% 280,000 鳥取 69% 140,000 沖縄 53% 284,000
富山 62% 255,000 島根 74% 198,000 (比例) 60% 1,127,000

アメリカか日本か

日本

日曜日の参議院選挙の結果をこれまで予想してきたが、きょうは一有権者として選挙のことを書きたい。拙者は、選挙にはそこそこ詳しいつもりだが、政策については居酒屋おやじ級なので、ひまな人以外は読まなくていい。
こんどの参議院選挙で、どの政党、候補者に投票するかで、一番重く見ていることがある。それは「アメリカか日本か」だ。戦後のわが国に、アメリカが与えた影響は、目に見えるもの、見えないものを含めて圧倒的なものがある。そして現在、そのままアメリカの影響を受け容れていくか、日本人が自信をもって自らの道を進むかの分岐点にきていると思う。
恥をさらすならば、拙者自身は数年前まで西洋的なものが善で、日本的なものが悪でださいという、安倍さんの言葉でいえば「戦後レジーム」にとりつかれていた。職場では、仕事さえできれば、協調関係などどうでもよい。子供の進路や生き方は、親に縛られるべきでないし、老いた人の面倒は国がみるべき。犯罪でなければなにをやってもよいし、権利はがんがん主張するのがかっこいいと。個人主義法治主義、権利義務中心主義が合理的で正義だと信じていた。それに対して、日本的に思われる家族主義、人知主義、譲り合い主義は消滅すべきものだと思ってきた。
そんな考え方だから、仕事もうまくいかない。それをわが国の社会が悪いと決め付けて、アメリカに移住しようと真剣に考えていた。そのために、労働ビザをとるのに有利な職に就いたこともあるし、またグリーンカードの抽選に応募したこともあるが、今思えば赤面ものである。
拙者にとって幸いだったのは、アメリカがアフガニスタンを侵略しはじめたことで、正義の味方だと思っていたアメリカが無辜のアフガニスタン人を殺したからだ。このときに何かがおかしいと気が付き、アメリカとは距離を置くべきだとは考えはじめたが、依るべき基準が見出せないまま数年を生きてきた。
しかし、石川英輔さんの江戸時代の庶民の豊かで共生的な姿を紹介した大江戸シリーズの本や、美容師さんに紹介されて読んだ藤原正彦さんの『国家の品格』などに触れて、家族主義、人知主義、譲り合い主義の日本人の庶民が、とりわけ江戸時代には世界で最も豊かで、知的で、情緒に優れ、しかも平和な社会を維持してきたことを知るにつけ、第一に依るべきはご先祖様の知恵であり、次に自分たちで考え、それでだめなときにはじめて外国の知恵を借りるのがいいと気が付いた。それだけ、日本人の問題解決能力は信用してよい。
ところが、いろいろな問題が起こると、すぐに外国のやり方を真似ようとしてしまう。企業はバブルが崩壊すると、あっさりと年功序列を放棄して、能力給を導入したが、うまくいっていない。政治では、右の陣営は成長のためと称して共生の理念に反する新自由主義を主張、それに対抗して左の陣営は権利義務中心主義での弱者保護を声高に主張している。前者が富裕層の利益を代表し、後者が貧困層の利益を代表し、お互いに主張をぶつけあって雌雄を決すればよいという西洋的な考え方は、たしかに一理あるだろう。
しかし、右の陣営の主張は、能力が平等であるはずがない人間を、同じ条件で競争させる点で無理がある。また、左の陣営の主張は、「天から与えられた権利」という空想の産物から敷衍して、平等を当然の権利として主張する点で無理がある。
日本人はご先祖様が培ってきた、家族主義、人治主義、譲り合い主義を活かして円満な社会を再構築すべきではないかと思う。難しい政策は詳しい人に任せるが、理想を言えば、強い者は弱い者をいたわり、弱い者はお返しに強い者を尊敬する。これまでとは逆に、日本的な共生と弱者保護の思想を世界に発信できれば、世界はいくらか平和になるかもしれない。
富裕層は自分の能力と努力だけで地位や財産を獲得したと思い上がってはならない。謙虚になって、社会や自然環境、歴史の中のご先祖様のおかげで、たまたま地位や財産を得たと知るべきだ。トヨタのような大企業の社長でも、仮に原始時代に生まれたならば、マンモスを追うような生活は避けられなかったろう。しかし、社会的なお膳立てが揃った現代に生まれてきたからこそ、名声や富を手に入れることができた。そのことに感謝しなければおかしい。自分さえよければ、競争相手が潰れてもよい、下請け企業が赤字でもよい、従業員の生活が苦しくてもよいという態度は、感謝の心が足りない証拠だ。
また、富裕層が大きな負担を受け容れ、その恩恵を貧困層が受けるならば、それに対して感謝を惜しむ必要はない。
株主主権が声高に主張され、農村は荒れ、郊外大型店が中小の商店を追い詰め、派遣労働者は賃金の3割以上を黙って搾取され、老後の生活や資産保護は保険・証券会社を通じて自己責任で、親子でともに食事をする家庭の方が珍しく、罰せられければなんでもやる身勝手な者がとがめられず、学校の先生は親たちの過剰な権利の主張にさらされ、国防はアメリカに依存のままでイラク戦争に加担させられ、日本はアメリカ化の完成一歩手前まできている感がある。
参議院選挙では、ご先祖様や日本人の力に自信を持ち、アメリカから距離をとり、上下が仲むつまじく暮らせる円満で平和な社会を目指す勢力に投票する。
今日はほんとうにたわごとでごめんなさい。

ポリバケツブルーの勝利!

荒木大輔投手コーチ

今日もKYで、野球。今日は野球を見てきたんだからしょうがない発言。あしたは、ちゃんと選挙のこと書きます。
7月と8月のライオンズは、本拠地では特別なユニフォームを着て試合に臨む。普段のホーム用に赤でアクセントをつけたサマーユニフォームと、最強時代のポリバケツブルーと揶揄されたオールドユニフォームだ。各節の初戦と二戦目がサマーユニフォームで、三戦目がオールドユニフォームである。今回は、オールドユニフォームの日に合わせて行った。
座席は内野指定席のかなりホームベース寄り。もちろん一塁側。座席に向かう途中、荒木大輔投手コーチが、ベンチとブルペンの間の通路で、選手名鑑みたいなものを見ているのを目撃。(冒頭の写真)相手の打線のことでも考えているのか。
スタンドの応援団もオールドユニフォームに呼応して、昔の打順どおりにトランペットを吹く。一番福地寿樹には名手辻のテーマ、二番片岡易之にはバント名人平野のテーマまでは選手のタイプがよく合っていて、三番中島裕之には鉄人秋山、四番GG佐藤には決め役清原まではまあまあ許せるが、五番栗山巧デストラーデでずっこけてしまう。なにしろ栗山のホームランは3本だから。
先発はライオンズが復帰二戦目の宮越徹イーグルスは朝井で、失礼ながら両軍ともにローテーションの谷間といえ、乱打戦を予想した。ライオンズは土日のホークス戦に涌井英章と岸孝之を温存したのだろう。カブレラは今日も欠場で、打線は軽量感を否めない。
宮越の立ち上がりは大乱調で、初回先頭から死球、四球、暴投の一人相撲でいきなり無死ニ三塁までピンチを広げたが、その後礒部に四球を与えたものの、しのいで0点に抑えた。ライオンズの裏の攻撃も、二死満塁までいったが、無得点。表裏で40分もかかった1回の攻防は、結局0−0に。
2回からの宮越は立ち直り、あまり速くないがなぜか速く見える直球と、かなりスピードを抑えた変化球で、3回も含めて、3人ずつで攻撃を断ち切った。2回の裏には片岡が先制打で1点。
しかし、4回の表にイーグルスの山崎武にレフトスタンドに運ばれて同点。レフト栗山の頭上をわずかに越してフェンスに当たるかに見えたライナー性の当たりは、最後の瞬間にロケットの再点火を得てまばらなイーグルス応援団の最前列に飛び込んでしまった。33号のソロホームラン。恐るべし、山崎武!
その4回裏にライオンズは福地の二塁打で再び勝ち越す。しかし5回表、伊東勤監督は2安打1失点と好投の宮越を、回の冒頭から二番手山崎敏に切り替えた。予定の継投だったのか?宮越は、勝利投手の権利を奪われたことになるのでかわいそうだが、伊東監督、荒木コーチなりの判断があるのだろうから、拙者ごとき素人が批判してもしかたがない。実際に、宮越−山崎−岩崎哲也三井浩二グラマンのリレーで、その後はイーグルスにたしか三塁も踏ませなかったと思う。
期待はずれだったのが和田一浩で、8回裏無死満塁の大チャンスに代打で出たが、詰まった当たりの見本のようなサードゴロ。先発は外れているし、開幕後しばらく首位打者を独走した勢いは影もない。次の細川亨があわやライトの頭上越えかという犠飛を放って、突き放した。この回投げたイーグルスの渡邊恒のバント処理のまずさは目に余った。無死一塁後の栗山、柴田博之のバントを連続でワンバウンドの悪送球をして、自らピンチを広げてしまった。
それにしても、五番バッターにバントさせるライオンズの打線って・・・カブレラ、早く戻って来てくれ!
勝利インタビューは、二回を抑えて勝ち投手になった山崎と、勝ち越し打の福地。外野応援団の試合後の応援アンコールで勝利の余韻を楽しみながら、帰路についた。
これで、今年の観戦成績は2勝2敗の五分。マリーンズが負けたので3位とは2ゲーム差に迫った。行くぞ、ポリバケツブルー軍団!

ナンかライスか(2)

ちょっと暗いかな

今日も、空気を読まずにカレーです。
前回は、どんなカレーにもナンよりご飯のほうが合うという結論になったけど、そうすると、じゃあナンはなんだということになる。
インドへは行ったことがないので、あまり知ったようなことは言えんのだが、インドでも南のほうでは米のご飯を多く食べ、北のほうでは小麦を多く食べる。その小麦の食べ方のひとつがナンなのだが、インド料理やさんなどで聞きかじった限りでは、あまり普段は食べないらしい。ナンはタンドールという大掛かりな釜がないと焼けないし、ふっくらさせるためのイーストが必要だとか、白い製粉した小麦粉を使うので粉代も高いとかで、普通の家では作れない。専らレストランとか、お金持ちの家で作っているようで、カレーをつけて食べるためのものかどうかも、怪しいと思う。知っている方は、コメントしてください。
家庭でよく作る小麦の主食はチャパティとか、ロティと呼ばれる、全粒粉を使ったもの。イースト菌が入っていないので、ぺちゃっとしていて、甘味もないから、カレーをつけて食べるのなら、こちらの方がありがたい。チャパティはフライパンなどで焼いたもので、ロティはタンドールを使ったものだという。
最後に、ナンのとっておきの食べ方を紹介したい。インド料理やさんに行ったなら、カレーはライスと食べて、少しおなかを空けておいてもらいたい。最後に、焼きたてのナンとヨーグルトデザートを注文するからだ。ナンの熱いやつをちぎって、冷たいヨーグルトデザートにひたして食べたら、本当にほっぺたが落ちるようなうまさだ。ナンのゆるい甘さがまず感じられ、その後冷たいヨーグルトの酸っぱさの対照が爆発する。ナンは最高のおやつなのである。

マトンとアーモンドのカレー

マトンとアーモンドのカレー

カレーに対する固定観念を覆すカレーでござる。甘辛くて、白っぽい出来上がりになるでござる。なお、これまでに紹介いたしたカレーとは違い、さほど健康的ではござらぬ。

材料(三人前)

作り方

  1. 下ごしらえのため、ボールを用意する。マトン肉は、脂肪の多い部分を除き、一口大に切る。しょうがとにんにくは皮をむき、おろし器でおろす。これらをヨーグルト、スパイスとともにボールに入れてかき混ぜる。肉を柔らかくできるかどうかが勝負どころなので、できれば半日寝かせておく。
  2. 「下ごしらえ」は寝かせたままで、フライパンにしょう油を敷き、ベイリーフの葉、フェンネル、カルダモン、マスタード粒のスパイス類に軽く火を通す。香ってきたら、玉ねぎを投入。中火で混ぜながら炒めるが、きつね色になるまでにする。次に、炒めた玉ねぎに「下ごしらえ」を投入し、肉の表面に火が通る程度に軽く炒める。
  3. 最後に残りの材料「煮込むもの」を投入して、時々かき混ぜつつ煮込む。水っぽさがなくなり、どろどろ感がでてきたら、できあがり。

参考

  • 費用・・・660円
  • 栄養(一人前)・・・657kcal(タンパク質39.5g、脂質42.0g、炭水化物29.5g、食物繊維10g)

アーモンドプードルは、お菓子の材料売り場にあることが多いが、なければアーモンドの皮をむいて、ミキサーなどで砕いてもいい。アーモンドはお湯につけると皮がむけやすくなり、砕くときも柔らかくなってよい。ミキサーがなければ、みじん切りにしてもよいが、これはひとつの根性仕事である。
このカレーは、アーモンドの甘さと香辛料の塩辛さの対照、アーモンドのざらざら感と肉の柔らかさの対照が特徴である。これらを楽しむため、唐辛子は使わないで作ってみた。少な目のご飯といっしょに召し上がるとよいだろう。
マトンや香辛料は、近所にイスラム教徒っぽい人が出入りしている雑貨店に行けば、たいてい手に入る。慣れないと入りにくいが、ここは日本なのだから、堂々と入ってみよう。日本人の客は少ないので、けっこう珍しがってあれこれ教えてくれるものだ。なかには、日本語の通じない店もあるけど(^^;)

死に票にしたくない!

アイルランドの投票用紙

カレーのことやタイ旅行のこととかも書きたいけど、選挙の話題にアクセスが集中しているので、今日も選挙のネタにする。

当落に影響がなければ『死に票』

拙者くらいの選挙マニアになると、投票に行くにしても、知人に投票を薦めるにしても、ただ好きな政党や候補者を選ぶだけでは、満足できない。選挙は、ある人や候補者を代表にするかしないかを決めるものなのだから、それに影響のない投票は『死に票』だと思う。
普通は落選者に投票した票を『死に票』と呼ぶが、拙者に言わせれば、票が有り余っている人に投票するのも『死に票』だし、とうてい当選に届かないいわゆる泡沫候補に投票するのも『死に票』だ。具体的にいうと、定数が3人の選挙区で投票するなら、ぎりぎり当選の第3位の候補者か、惜しくも落選の第4位の候補者に投票しなければ、せっかく投票に行く甲斐がないと、勝手に思っている。
そのためには、事前に情勢を知っておく必要があるが、世間で報道されている報道は必ずしも正確ではないし、情勢の報道によって投票行動がゆがめられる弊害もある。拙者も統一地方選挙では、当選させたい候補者のうちで最も当落線上に近い候補者を推理して投票したが、その候補者は余裕をもって当選し、余裕があると思っていた別の意中の人が落選してしまった。一票を有効に働かせたいと考える有権者にとって、いまの選挙制度は不親切だといえる。

アイルランドやオーストラリアの選挙制度

選挙制度には小選挙区制や大選挙区制、比例代表制などさまざまな手法があるが、それは国のありかたそのものに関わる問題だから、一筋縄ではいかない。でも、選挙区ごとに定数を決めて、単純に得票数順に当落を決めていくのは、技術的にもっと改善の余地がある。
アイルランドやオーストラリアでは、図のように候補者が政党名などとともに、一覧になった投票用紙を受け取る。有権者は、右端の空欄に当選してほしい順番に数字(最後まで数字を書き込む必要はない。1だけでもいい)を書き込んでいく。有権者は情勢がわからなくても、好きな候補から順に番号をふれば、その意図が最大限に活かされる仕組みになっている。これを専門用語で『単記委譲式』と呼ぶらしい。

  1. 開票では、まず『基数』といわれる当選に必要な票数を決定する。基数の式は『有効投票数÷(定数+1)+1』票で、これだけの票をとれば理論的に絶対落ちない数字(定数1なら過半数と呼ばれる数字)だ。
  2. 次に、候補者ごとに投票用紙に『1』と書かれている枚数を数える。ここで基数を超えた候補者は、当選が決定する。そして、その候補者が基数を上回っている分を、その候補者に『1』と書いた人の票のうち『2』と書かれた候補者の比率に応じて分配する。
  3. 2の後で基数を上回った候補者がいれば、もういちど2のように余った票を分配するが、基数を上回る者がいなければ、とりあえずその時点で最下位の者を落選とする。そして、最下位の候補者の票を、次の順位の候補者に分配する。
  4. これを繰り返して、基数に達する当選者が定数になったら、おしまい。でも、順位が途中で抜けている票があったりして、定数に達しなかったら、2と3をやれるだけやった時点で上位の者が当選。

サルでもわかる具体例

説明だけだとわかりにくいので、具体例を書きます。
定数は3で、与党カレー党からダル氏、ムルギ氏、サブジ氏、野党ラーメン党からヤキブタ氏、オニギリ党からオカカ氏が出馬しています。有効投票は60000票でした。

党派 名前 開票1 開票2 合計 開票3 合計 開票4 合計 当落
カレー ダル 25000 -9999 15001 1位当選
カレー ムルギ 7000 +4999 11999 +6500 18499 -3498 15001 2位当選
カレー サブジ 4000 +3500 7500 -7500 0 落選
ラーメン ヤキブタ 13000 +500 13500 +500 14000 +825 14825 次点
オニギリ オカカ 11000 +1000 12000 +500 12500 +2673 15173 3位当選

まず、基数を計算し60000÷(3+1)+1=15001票となります。
開票1:『1』の票を数えて基数を超えたダル氏が当選です。
開票2:ダル氏の票が基数を9999票超えているので、『2』と書いてある比率に応じて分配します。今回は、ムルギ氏50%、サブジ氏35%、ヤキブタ氏5%、オカカ氏10%だったので、これに9999票を乗じて分配します。やはり、同じ党への委譲票が多く出ます。これで、ダル氏へ余分に投票した有権者は救済されます。
開票3:この時点で基数に達している候補者はいないので、この時点で最下位のサブジ氏は落選とします。しかし、サブジ氏への投票は、次の順位の候補者に委譲するので、サブジ氏へ投票した有権者は救済されます。
開票4:ムルギ氏は基数を超えたので、2位で当選が決まります。カレー党は2議席を獲得し、残り1議席を野党間で争うこととなりました。ムルギ氏の18499-15001=3498票を、次の順位の候補者に割り振ると、カレー党と鋭く対立するラーメン党への委譲は少なく、ヤキブタ氏25%、オカカ氏75%の割合となりました。これに3498票を乗じて加算します。
開票5:カレー党に比較的近いオニギリ党のオカカ氏が、得票では2位のヤキブタ氏を交わして当選です。

単記委譲式の利点と欠点

  • 利点
    • 理論上、すべての投票が当落の判定に影響する。→死に票がでない。
    • 非拘束名簿式比例代表制(参議院比例区)に比べて、「ある候補者は好きだが、その政党を伸ばしたくない」という投票のしかたが可能。アイルランドの総選挙(選挙区の定数3〜5)でも、政党優先で順位をつける有権者のほかに、住んでいる場所が近い先生に政党に関係なく順位をつける人も少なくない。
    • 共倒れの心配が少ないので、候補者数を抑えたために議席が伸びない心配がない。有権者にとっても、民意を反映しやすい。
    • アナウンス効果が出にくい。
  • 欠点
    • 開票が面倒くさい。アイルランドではたいてい1日がかりで翌日開票している。
    • 投票用紙がでかい。
    • 選挙制度を理解しにくい。(理解しなくても問題ないけど)